
ハスタグライ(Hastagre)は、アシュタンガヨガの9つのドリシュティ(視点)の一つで、「手」を意味します。この視点は、両腕を広げたり伸ばしたりするポーズで使用され、手の正しい位置を調整するのに重要な役割を果たします。
ハスタグライドリシュティを実践する際は、以下のポイントを意識しましょう。
特にウッティター・パールシュヴァコーナーサナやトリコナアサナなどの立ちポーズで頻繁に使用されます。手に視点を向けることで、腕の正確な位置と角度を確認でき、ポーズの安定性が向上します。
ハスタグライドリシュティは、単なる視点の練習にとどまらず、身体と精神の両面に深い効果をもたらします。
身体的効果:
精神的効果:
ハスタグライドリシュティを実践することで、自分の内側に意識を向けて集中力を高めることができます。また、外向きの視点を使う際は、自分と外界とのバランスを認識する作用があるとされています。
意外な効果として、目の周りには消化器系をコントロールする経絡が集中しており、視点を定めることで消化器系を刺激し活性化させることができるという研究もあります。
アシュタンガヨガでは、ナヴァ・ドリスティ(9つの視点)という体系があり、ハスタグライはその重要な一部を構成しています。
9つのドリシュティ一覧:
この体系の中で、ハスタグライは中間的な位置にあり、自分の身体の一部でありながら視界に入る範囲という特性を持ちます。これにより、内観と外界への意識の橋渡し的な役割を果たしています。
練習初心者にとって、手は比較的見つけやすい視点であるため、ドリシュティの練習入門としても適しています。
ハスタグライドリシュティは、東洋医学の経絡理論やヨガのチャクラシステムと深い関連性があります。
経絡との関係:
鍼灸医学では、手指の井穴(せいけつ)と呼ばれる指先の始点から、体液や脊髄の髄液に混じってエネルギーが各臓器に流れ、全身の経絡を巡るとされています。手に視点を定めることは、鍼灸治療における特定の経穴への刺激と同様の効果をもたらすと考えられています。
チャクラとの連動:
手首や関節を動かすだけでも五臓の病気を治せるという古代中国の医学書「黄帝内経霊枢」の記述もあり、ハスタグライドリシュティの実践は治療的側面も持っています。
ハスタグライドリシュティを日常の練習に効果的に取り入れるための具体的な方法を紹介します。
段階的練習法:
練習のコツ:
応用テクニック:
手指を使ったムドラー(手印)と組み合わせることで、より深い効果を得られます。特にチンムドラー(親指と人差し指を合わせる形)は、丹田に力が加わり第2チャクラの安定をもたらします。
注意点:
練習を継続することで、手への視点を通じて「身体は軽く、自由になり、体内が活性化している」感覚を体験できるようになります。これがハスタグライドリシュティの真の効果であり、アシュタンガヨガの深い練習への扉となるのです。