
サラスヴァティー女神の起源は、古代インドに流れていた聖なる川にあります。サンスクリット語で「サラスヴァティー」とは「水(湖)を持つもの」を意味しており、まさに水と豊穣の女神として崇拝されてきました。
インドの最も古い聖典『リグ・ヴェーダ』において、サラスヴァティー川は神聖な川として賛美されており、その川の化身として女神サラスヴァティーが誕生したのです。興味深いことに、このサラスヴァティー川は紀元前500年頃にはすでに干上がってしまったとされており、現在は地下を流れる川とも言われています。
🌊 古代文明との関連
川の女神として、サラスヴァティーは「流れるもの」すべてを司ります。これには物理的な水の流れだけでなく、言葉の流れ、音楽の流れ、知識の流れなども含まれており、後に学問と芸術の女神として発展していく基盤となりました。
サラスヴァティー女神は、物腰がやわらかく、やさしい色白美人として描かれます。その美しさは創造神ブラフマーをも虜にするほどで、額には三日月の印をつけた四本腕の姿が一般的です。
持ち物とその意味:
🦚 乗り物としての孔雀
サラスヴァティーは美しい孔雀に乗って移動します。孔雀は昇華や真理の追究である錬金術の象徴とされ、その美しく広がる羽根は知識の多様性と芸術の豊かさを表現しています。
近年では、蓮の花に座り、二本腕でヴィーナを弾いている姿が最も一般的な描かれ方となっています。この姿は芸術と学問の調和を表現しており、多くのヨガスタジオや学問の場でも親しまれています。
サラスヴァティーとブラフマーの関係は、ヒンドゥー教神話の中でも特に興味深いエピソードです。創造神ブラフマーは当初、サラスヴァティーを娘として創造しました。しかし、彼女のあまりの美しさに魅了されたブラフマーは、娘ではなく妻として迎えたいと願うようになります。
ブラフマーの五つの顔の由来:
この神話は、サラスヴァティーがブラフマーの妻となるエピソードの一つですが、実はこの話は後の時代に作られた創作であることが研究で明らかになっています。元々は独立した川の女神であったサラスヴァティーが、バラモン教に取り入れられる際に後づけされたエピソードなのです。
💫 もう一つの説
一部の伝説では、サラスヴァティーは元々維持神ヴィシュヌの妻であったとも言われています。攻撃的な性格を持つサラスヴァティーに愛想をつかしたヴィシュヌが、ブラフマーに譲ったという説もあり、神々の関係の複雑さを物語っています。
ヨガを実践する人々にとって、サラスヴァティー女神は特別な存在です。なぜなら、彼女は「流れるもの」の女神であり、ヨガにおける呼吸の流れ、エネルギーの流れ、そして内なる知恵の流れを司っているからです。
ヨガとサラスヴァティーの関係:
多くのヨガスタジオでは、サラスヴァティーにまつわる神話と歌を取り入れたクラスが開催されており、参加者は女神への感謝とともに内なる知恵を育んでいます。
🧘♀️ 現代ヨガでの活用
サラスヴァティー女神は仏教とともに東方へ伝播し、最終的に日本では七福神の一柱である弁財天として親しまれるようになりました。この変容の過程は、神話の文化的適応の興味深い例といえるでしょう。
伝来の過程と変化:
弁財天のご利益:
興味深いことに、弁財天の持つ琵琶は、サラスヴァティーのヴィーナが日本に伝わって変化したものです。また、サラスヴァティーが孔雀を連れているのに対し、弁財天は白蛇を連れているという違いも見られます。
この変化は、各地の文化的背景や宗教的ニーズに応じて神々の性格が変容していく過程を示しており、サラスヴァティー女神の普遍的な魅力と適応力を物語っています。現代のヨガ実践者にとっても、この多面性は学問、芸術、そして精神的成長のすべてをサポートしてくれる心強い存在として理解されています。